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看護必要度とベッド単価とDPC

何かの歌のようになってしまいました。診療報酬改定のお話です。 

 

 予定では明後日3月5日に令和2年度の診療報酬改定告示がでます。皆様の病院では今回の改定をどのように捉えているでしょうか。点数的には大きな変動はなくマイナーチェンジ的に捉えられるお話もよく聞きますが、本当にそうでしょうか。

 

 ぱっと見の基準上はマイナーチェンジかもしれませんが、病院の在り方や病床運用の考え方の大きな転換となりうる内容も、実はいくつか含まれています。一例として一般急性期を軸にした論点を見てみます。キーワードは「看護必要度とベッド単価とDPC」です。

 

看護必要度について

 中医協の議論の流れの通り、入院医療における重症度をより適切に評価するために、項目の入れ替えおよびハードルの変更(急性期一般1の場合はⅠで31%)が行われました。そもそもこれは7:1の絞り込みという意味合いもあります。また看護必要度Ⅱの導入については今のところ次回改定までの経過措置となっています。

 

ベッド単価とDPC

 DPC病院の運用方法である一般病床から地域包括ケア病棟への転棟についても取り扱いが大きく変わりました。特に400床以上の病院では患者フローの上流にある病院としての役割を自覚した運用が強く求められます(6割要件)。

 もう一点大きな基準の変更が「同一保険医療機関内の地域包括ケア病棟入院料を算定する病棟に転棟した場合については、診断群分類点数表に定められた入院日Ⅱまでの間診断群分類点数表に従って診療報酬を算定する」です。

 この算定基準の変更は、ベッド単価を基準にしたよくある「ベッドコントロールを2SD基準に」という価値観は当てはまらなくなります。そもそも急性期を標榜しているのであれば2SD基準ではなく、効率性係数の向上を踏まえたベッドコントロール基準を設けることを強くお勧めしています。

 上記によって転棟の基準を「ベッド単価ではなく看護必要度を軸にする」必要があることとなります。その対応のために入院決定や転棟決定フローチャートの更新を一緒に検討したりもしています。また入退院支援部門の積極的な関与と権限強化などやれることはたっくさんあります。ただし、効率性係数と複雑性係数に着目して運用している急性期病院においては、今まで通りの運用と考え方は大きく変わらないのではないかと考えております(検証中ですが・・・)。 

 

 今回の改定は個人的には前回改定の背中押し改定であると思っています。ケアミックスDPC病院などは、看護必要度をよく見ながら一般病床と回復期の病床数バランスを見直さなけらばならないと思います。これは決してマイナスや病院規模縮小ではなく、あくまで積極的なモデルチェンジと捉えるべきです。

 

 なんども記事には上げていますが、医療機関として求められる役割を追求とそれに応えることが第一であり、急性期にしがみつくことではありません。厳しい書き方になりますが、無理をしてまで急性期に残ろうとすると、収入額の維持が難しいだけではなく、収益性はさらに低下します。健全かつ継続性のある病院経営のためには、求められていることにを正しく認識し、その領域に全力を尽くすことであると考えます。

 

 4月15日まであまり時間はありません。今一度自院の検証作業と経営計画の磨き上げをおすすめします。

2020年度の改定率は全体で-2.5%以上のマイナス改定に?

 財政制度等審議会が11月1日に開かれた部分で、表題のようなお話が出てまいりました。財務省では、診療報酬全体を1%引き下げると、患者負担も含めて年間約5,000億円の削減になるとしています。
 
 令和元年9月26日の厚労省からの発表によると、平成29年度の国民医療費全体は43兆0710億円となっており、そのうち入院医療は37.6%の16兆2116億円にのぼります。
 
 実は前回の改定でも財政制度等審議会は全体で-2.5%程度のマイナス改定が求められていました。しかしながら結果は0.55%のプラス。これは薬価制度の抜本的な改革で-1.65%もの大きな財源が出来たからと言われます。
 
 では今回の改定はどうでしょうか。最近の改定では薬価関連を下げて、それを財源に医科歯科に手当をしていますが、今のところその姿勢は変わらないように見えます。
 
 薬局において調剤料と調剤基本料の厳格化についてかなり踏み込まれた話が出てきていますので、統廃合の動きが激しくなると予想されます。
 
 病院においては前回改定で看護必要度の要件が、ある意味緩まった内容ではありました。結果として7対1の病床数は数%の減少と、政策の流れとは違った姿をここ1年半で見せています。中医協の議論や報告書で、7対1から移らなかった理由や、看護必要度の内訳など細かいデータが机上に挙がっているところから見ると、急性期一般入院基本料1の要件である看護必要度Ⅰ該当割合30%から35%などに厳格化されることも十分予想されます。
 
 いずれにせよ看護配置のみで報酬が決まる時代はそう長くはないと予想されます。自院の患者層や診療密度を俯瞰し、現状どのような役割を果たしているかを冷静に捉える必要があるでしょう。その上で5年後、10年後存続できるビジョンを立てる必要がある時期と考えます。
 
 ダウンスケールではなくてモデルチェンジが必要な地域密着型急性期病院は多くあると思います。診療報酬改定ではさまざまなデータが提示されます。うまく利用して、地域に必要とされ続ける病院作りに役立てるべきと思います。

2020年度診療報酬改定に向けて

 11月1日に開かれた財政制度等審議会において、財務省は2020年の診療報酬改定ではマイナス改定を求めました。根拠として、近年の改定率が賃金や物価の推移と比べて高水準であることとしています。またこの改定率に関しては、病院と診療所に差をつけることも求めています。

 

 ここに関してはいろいろ反論は出ていますが、現場の人間としては求められる方向を認識することが重要であると考えます。診療報酬改定の細かい施設基準を知り、病床再編などを行い、結果として取りこぼしがないようにすることも確かに重要です。ただしこれは短期的な血止めであり、将来的な安定運営につながるかというと、必ずしもそうではありません。

 
 

 では診療報酬改定の推移をみながら何を一番にするべきか?を考えてみましょう。 

 
 

 何度か記事で挙げてはいますが、まずは病院としての事業計画を磨き上げることです。診療報酬上の落穂拾いなどは次のステップと言ってよいでしょう。点数よりも「なぜその基準が出来て何のためにその要求事項があるのか」「昨今の改定と比較してどのような政策の流れか」などを掴むことが重要であると言えます。

 

 病院特有の事業計画の策定方法は様々ノウハウと特性考慮が必要です。このあたりについては個別性が強いので記事にするには難しいですが、関与した病院様では事業計画の策定・検討がしっかり定着すると、継続的な収支改善につながっています。

令和2年度改定における療養病床の経過措置

 平成30年改定において、経過措置まで含めると療養病床の区分は4類型となりました。医療法と診療報酬の人員配置基準のすり合わせが進み、20対1以外は明確な減算となっています。また再編先として介護医療院が制度化されたのは記憶に新しいところです。

 

 では平成30年の改定から約1年半。経過措置対象病院の動きを確認してみましょう。

 

 平成30年改定前の時点で、療養病棟入院基本料2(25対1で現在は経過措置に該当する基準です)の移行先は、療養病棟入院料1にアップグレードした病棟が24%。介護医療院への移行はわずか2.9%。旧30対1においては入院料1が12.2%、入院料2が9.8%。そして介護医療院への移行は0%となりました。

 

 これらの数字からいえることは、介護医療院への移行はほぼほぼされていない状況があり、療養病床の中間層は政策意図に比べかなり動きがなかった1年半とも言えます。

 

 特に介護医療院については、市町村の財源を圧迫するので、自治体側がかなり消極的だったことも事実です。しかしながら、ここまで移行がなされていないと、経過措置を次回改定で廃止することは難しいのではないかと考えます。

 

 上記の数字を受けて、10月18日の中医協でも経過措置の廃止は困難かもしれないとの声は上がっています。ただし経過措置はこのまま継続される訳ではなく、経過措置の基準の厳格化は検討しなければならない論調ではあります。減算の幅が大きくなることも考えられますし、経過措置にも医療区分の下限が定められることも考えられます。いずれにせよ経過措置を算定している病院には、さらに経営が苦しくなる状況とも言えます。

 

 正直なところ、私が支援している療養病床の経営状況は2極化していますし、経営状況の良い病院でも療養病床そのもののベッド単価が高くないので、建替えなどの大規模投資になった際に、かなり厳しい事業計画を作成することになっています。

 

 このような状況下で、これから先の療養病床の在り方を考える際には、病院単体での経営・運営だけでは不十分であるように感じます。ある意味では現在の医療・介護のハブとなるような意識が必要なのかもしれません。本来は地域包括ケア病床が担うべきなのでしょうが、60日という在院日数の縛りがありますし、循環器などの疾患群によっては、一律な在院日数の評価ではなかなか苦しい領域もあります。療養というと総合力が求められる領域ではありますが、きちんとした事業マップを作成・更新を続け、療養の中でもどこに注力するかがカギとなります。

 やはり、きちんとした現状把握・計画策定・周知と実行・そして評価・・・が肝要であると考えます。

 

 

 

 

 

 

 

公立・公的病院の再編統合

 9月26日に厚生労働省内の「第24回地域医療構想に関するワーキンググループ」にて、かねてより検討中とされていた再編統合の視点で、抜本的な役割の見直しが必要であるとされる病院が名指しされました。
 このWGでの分析結果をもとに、厚生労働省は各県に、2025年までに対象病院がどの領域カバーするのかという「再編統合を含めた具体的方針」を定めるよう通知する予定です。再編統合がない場合には令和2年の3月まで。再編統合がある場合でも令和2年9月末までに地域の関係者合意を求める事となります。
 事業計画から始まり、病床再編や経営改善を支援をする立場から考えるますと、時間的猶予は無いに等しいです。外部環境分析と機能分析をまずはしっかり行い、根拠のある手札を11月までには持っておきたいところです。
 また今回の分析及び指摘は、2017年度の病床機能報告制度という少々古いデータに基づいているので、今回は対象病院に該当していなかった病院でも、同様の対応は必須であると考えます。
 厚労省に指摘されてからでは遅いのです。地域に欠かすことのできない医療機関として存続し続けるためには今日から継続しての取組が必要となります。現在では変化のない存続はありえません。
 まずはきちんとした事業計画を作りましょう!!

特定処遇改善加算

皆さんの事業所は算定お困りでないでしょうか。

参院選が終わった後で駆け足での制度開始なので、QAをみながら悩んでいる事業所も多いのではないかと思います。ただし、このような場合は細かい算定論点ももちろん重要ではありますが、実は制度設計の趣旨をきちんとつかむことが重要です。

 

処遇改善加算が介護職員処遇の水平的な底上げを意図するものであれば、特定処遇改善加算は真逆の意図によって制度設計されています。

つまり算定するしないの意思決定よりも法人の将来にわたるキャリアパスに沿った、綿密な分配方法が一番重要な点であると言えるでしょう。

 

また一見すると、4:2:1の配分方法はかなり縛りがきつそうですが、あくまで平均改善額なので、きちんとした解釈をすれば、かなり自由度が高い配分方法が可能です。

その際にも440万円以上の方の取り扱いがグループ1と3では異なることなど、要件の細かい読み解きと整理が必要となります。また法人内のルールを統一し、配分根拠を説明できることも重要です。

 

社会保障費のうち、年金に関してはある程度目途がつき、診療報酬と介護給付が論点として挙がりますが、包括報酬の割合が高い介護給付はコントロールされやすいです。限られた報酬の中で、固定費の大部分を占める人件費のコントロールは介護事業の永続性において一番重要です。特定処遇改善加算におきましても、同じ視点からしっかりと取り組まれると良い経営につながるでしょう。

 

 

 

 

 

看護必要度から見る病院の舵取り(急性期)

1.平成30年報酬改定による看護必要度の変化

 平成30年診療報酬改定によって看護必要度の要件が大きく変わりました。変更点は、現行の評価方法に加えて、AとC項目については診療実績データ(EFファイル)での評価も可能となった点です。

 診療実績での評価方法を選んだ場合のメリットとしては、病棟看護師の負担軽減につながると考えられます。デメリットは、救急搬送後の2日間の入院評価がEFファイルから読み取れない理由より、看護必要度が低い値で算出されてしまうことです。つまり救急搬送後、特に軽症の症例を多く受け入れている病院は注意して選択する必要があるといえます。また認知症対応が評価される点は言うまでもないでしょう。これらを踏まえて次回改定も含めた予測をしてみようかと思います。

 

2.予測 

 まず一点目、今回の報酬改定議論の過程で、療養病床もデータ提出対象となることが明らかとなりました。結局200床以上の病院のみが対象となりましたが、次回以降の報酬改定ではさらに範囲が拡大することと考えられます。特に医療区分やADL区分に関しては厚生労働省としては詳細に把握したいところであります。

 

3.予測からの予測!

 さらに予測です。療養病棟の臨床から看護必要度を見た場合、医療区分2・3の患者さんに対する看護行為の労力はとても大きなものがあります。いくつかお伺いした先の療養病床1算定病院に必要度を出していただいたところ、70%超えの病院が多くありました。ここから各病棟種別のデータ比較分析を行い、今後の入院基本料の区分や報酬額そのものの検討が進むと考えられます。より実態が明らかにされるということですね。

 より具体的に申しますと、次回の報酬改定時にはDPCⅠ群の超急性期病院とDPCⅢ群ケアミックス病院の要求事項と評価区別のために、急性期の要件を厳格化する可能性が考えられます。なぜなら一般病床による認知症評価による看護必要度の「大幅な向上」は、急性期の中で回復期や療養型の患者さんを看ていると捉えられるからです。具体的変更点としては、A得点とC得点をより重点的に評価する方法に傾斜をかけるような変更などが考えられます。個人的には内科系の重症度の評価バランスから考えると、A得点の厳格化や評価項目の多様化等が落としどころとして考えやすいのではないかと思います。また高度急性期の定義を変更することも検討されるのではないでしょうか。

 

4.まとめ 

 今回の評価方法の変更で看護必要度が7%~10%上がった病院を見聞きしますが、内訳はケアミックス病院が多い傾向がありました。一方DPCⅠ群の病院は思ったように看護必要度が上がらず、30%が非常に厳しいハードルになっている事例もあります。      

 前者の病院は一見幸せな改定になったように見えますが、ある意味では「なんちゃって急性期」であることが浮き彫りになってしまったように感じます(いい表現ではありませんが)。今後2年間はラッキーと考えるのではなく、その地域に必要な役割あった形状変化をするための期間と考えたほうが良いのかもしれません。形状変化の観点から急性期一般入院入院料1から2・3への移行は、一見簡単なように見えますが、労務上や臨床上時間をかけて行うことが望ましいでしょう。このあたりを単純に考えますと、実務的に大きな摩擦を生みだします。まずは自院の将来的なビジョンを明確にし、浸透させながら病院全体で2・3への移行を目指すべきであると考えます。今回はそのための2年間であることを考えるのであれば、病院によっては非常に重い2年間になりそうですね。