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3rdG:ver1.1受審にあたって その2

1.ケアプロセスで問われる書類 

ケアプロセスの評価をすることは、入院から退院までを一連の流れとして確認・評価を行うこととなります。この評価に関してはカルテや様々な約束事を示す書類・マニュアル・規程によって証明することにもなります。つまり当日はカルテだけではなく諸規程・マニュアルなども用意することが必要となります。

 

2.何をマニュアルとするか 

マニュアルにしなければならないものが定義としてあるわけではありません。義務から作るのではなく、必要であるから作成することを忘れないで下さい。基本的には入職時の伝達事項・教育マニュアル、多職種が関わって業務にあたるもの、誤認防止、指示出し指示受け、感染対策に関する手順等はどこの医療機関でも必須といえるでしょう。

またマニュアルは完成して運用すれば終わりではありません。その時代で要求される医療のスタンダードや、実際に運用してみての評価も反映され磨かれなければなりません。旧Verの審査では、規定類の作成などストラクチャー重視の視点であったため、大きな労力を払って整備した医療機関はたくさんあると思います。今回のプロセス重視は、その整備した規定やマニュアルなど実質的な運用をし、活用することができているかどうかの視点で審査がなされます。

 

3.記録の審査 

 

マニュアルそのもの有無については、現物や文書管理規程等を通して確認することができますが、運用面はどうでしょうか。この運用がなされているかどうかを記録がある事によって提示できます。例えば、カルテ上の看護実践記録、機械などの点検簿記録、研修の参加・開催状況、会議や委員会・カンファレンスの組織活動の記録などです。

 

 

まず看護記録ですが、医療行為そのものの記録だけではなく、その実施前後の記録・評価が記載されていることが重要です。また内部的なものでよいですが、記録の質的監査がなされている事も重要です。なお審査の当日は、円滑なカルテ紹介ができるように、時系列で何があったかのサマリーがあるとより良いと考えます。また個別の患者カンファレンスについて、治療方針や計画の策定に関して誰がどのように決定したのかプロセスの記録も必要です。

次に点検記録についてです。病棟においては定数管理している医薬品や麻薬金庫などの点検記録が漏れなく記載されていることが必要です。また輸液ポンプや救急カート・DC、車椅子や消火器など多岐に及びます。管理する必要があるものは継続的な管理が重要となります。点検の形態は問わないので、全体として周知徹底をしましょう。

 

会議や委員会についても同様です。開催時には書記を設け、日時・参加者・協議事項などを残しておくことが求められます。

 

 

4.まとめ 

 ケアプロセスの審査は従来の審査と視点が異なり、「実践」について問われると初期のレポートにてお話し致しました。残した実践を再評価することによって、質的な向上を目指しながらレベルの高い標準化ができるものと考えます。

 

 

病院機能評価 カルテの選定テクニック

1.病棟と1例目カルテの選択方法 

前回は病院機能評価の基礎ともいえる自己評価についてお伝えいたしました。今回は受審にあたっての病棟とカルテの選択についてお伝えします。

受審病棟は病院を代表し、特徴をよく表している病棟を選択することが求められます。また審査を受ける病棟は副機能がなければ2つであり、これらで2領域の評価項目を網羅できるようにする必要があります。

カルテについては、旧バージョンと提示方法が大きく異なります。現在のバージョンではプロセスを重視することが求められると以前のレポートでお伝えしました。つまり旧バージョンで行われていた、さまざまな患者さんのカルテを切り貼りして理想的な提示カルテで審査に臨むのではなく、1例目に選択するカルテは入院(転院も含む)から退院まで(死亡退院は含まない)までの病院の対応や考え方が分かる必要があります。

またこのカルテ選定に関しては、「病棟において代表的な症例」であることが求められています。この代表的の意味合いですが、病棟で多く治療されている疾患や特に力を入れている疾患などが当てはまります。レアな症例のカルテをあえて選択するのではなく、日常看護業務の中から充実して関与できたケースを受審カルテとして選択することが望ましいでしょう。

 

2.2例目カルテの選択方法 

ケアプロセスの審査において項目を網羅して紹介する必要があるのですが、1例目で全てカバーすることは難しいでしょう。よって2例目以降で紹介をすることとなります。

1例目のカルテで入院から退院までの概略を説明し、説明し切れなかった評価項目については2例目以降でカバーするイメージとなります。

選定に際して1例目と異なる点は、審査の時点で入院中でも退院済みであってもどちらでも構わないということが挙げられます。

 

3.審査用カルテの準備時期 

上で述べたとおり、1例目は退院していることが求められますので、平均的な入院日数から逆算して準備を開始する必要があります。この点入院期間が長期化しやすい療養病床や精神病床で受診する場合は注意が必要です。できれば審査の一ヶ月くらい前には退院できる患者のカルテを受診候補カルテとして準備すると良いでしょう。審査を受けるカルテがあまりにも前のものであると、最新の規程や基準の実践が反映されていないものになってしまう可能性が高いです。可能なかぎり新鮮な状態のカルテを選択できるように備えることが望ましいでしょう。

また逆算的に受審カルテの選択をしなければならない時期になりましたら、代表的な症例に該当する患者さんが入院されました時点で、カルテに候補のしるしを付けておくと良いでしょう。

 

4.まとめ 

今回はカルテの選択方法とその時期についてレポートしました。入院から退院まで一連の流れで審査するケアプロセス審査に適合するカルテを整えるためには、前提として運用するべき規程や基準・手順等がきちんと整備されていること、またこれらを運用する上でひも付きとなる様式や記載基準なども整っていることが前提となります。少なくとも審査の1年前あたりから、ケアプロセス審査を見据えた枠組みの作成ならびに運用を意識し、自己評価によって現状を正しく認識してから改善行動を繰り返すことにより、円滑かつ意義のある機能評価の受審ができると思います。

3rdG:ver1.1受審にあたって

1.3rdG:ver1.1受審にあたって 

さて前回は病院機能評価の概略についてお伝えいたしました。今回は受審にあたってより具体的な注意点等をお伝えします。

前レポートで述べたとおり、現在の評価基準はストラクチャー重視ではなくプロセス重視、つまり前回審査基準での受審までに構築された「型」をきちんと使いこなせているかどうかが問われます。

具体的な審査基準は各病院の機能によって6種別に分かれており、旧基準より実践的な基準となりつつあることは前レポートで述べたとおりです。これらからどの基準を用いるかは、原則として病床数が最も多い機能に対応する種別が適応されます。ケアミックス病院の場合は副機能として種別を追加して受審することとなります。

どの種別での受審であっても、評価は1~4領域に分けて行われます。

 

2.自己評価項目と評価方法について 

評価をつける際には、機能評価機構からダウンロードできる自己評価項目を確認し、解説集と見比べる必要があります。

解説集の中には「評価の視点」と「評価の要素」が記載されています。順序として「評価の視点」というテーマの趣旨を理解し、項目を達成するために「評価の要素」を確認し、実践でカバーする必要があります。なお「評価の要素」に関しては解説集の中に細かく意図や要求事項が記載されていますので、これらを読み込む必要があります。

ただし、ここで問題となるのは「どのレベルまで実践したら達成」と考えるかです。この求められるレベルは病院によって様々です。なぜなら各病院によって求められる機能や規模そのものが異なるからです。つまり最初にしなければならないことは「自らの病院を適切に知る」ことであるとも言えます。自院に求められる機能を知り、現在の医療水準と比較し、当然に要求される事柄に応え切れているかどうかが基準となるといえます。より具体的に申しますと、同じ機能・規模の認定病院と比較することで、現在の要求事項とそれらに応えられているかの基準を得ることができると言えます。

 

 

3.まとめ 

自己評価を反復して行うことで、現状の強み弱みはかなり明確になるのではないかと考えます。また、この反復の中から一定の共通項目が見えてくるかもしれません。

ただし強みと言える項目がたくさんあるから良いというわけではなく、自院の理念や求められている機能と強みの傾向を照らし合わせ、傾向や方向性の検討を行う事によって初めて本当の評価ができるともいえるでしょう。

病院機能評価を受審するしないはさておき、チーム医療推進、標準化推進や現状診断のため、自己評価を一つのツールとして利用することをお勧めいたします。

病院機能評価受審対策 はじめに

1.変わる外部評価 

近年医療介護領域において、様々な外部評価が要求されつつあります。今回はその中の一つ、医療機関の臨床に入り込む病院機能評価についてお伝えいたします。

 

そもそも病院機能評価とは、約20年前に病院機能そのものを監査する目的で運用が開始された第三者評価機能です。その後6回の改定を経て、2015年4月から現在の形となっています。

 

この直近の改定により評価項目の表示方法が大きく変わり、以前の評価基準小項目をまとめて中項目とし、ひとつひとつを評価する方式ではなくなりました。しかしながら中項目での要求事項は、従前の小項目に該当する部分をクリアする必要があるので、求められる事柄の範囲はあまり変更がないといえます。

 

しかしながら本審査においては大きな違いがあります。今までの機能評価で整備されてきた規程や基準が整備されていることを踏まえ、これらが実践されているかが問われます。ですから規程や基準などは当然更新されていることが前提となりますし、それを基に普段からの病棟業務に臨んでいることが求められるといってよいでしょう。まさに病棟業務の標準化がきちんと担保されているか、日ごろの努力を表現する機会とも言えます。

 

2.受審に当たって考慮すべきこと 

上記を念頭に置き病院機能評価の導入や更新を考える際には、メリットとデメリットを比較する必要があるので、簡単にですが整理してみましょう。

 

メリット

・様々な施設基準の算定に有利に働く

    緩和ケア病棟入院料(がん拠点病院を除く)

 緩和ケア診療加算 (がん拠点病院を除く)

 感染防止対策加算1・2

 総合入院体制加算1・2 

 患者サポート体制充実加算

 

・病院の優れている点、改善点の明確化

 

デメリット

・経済的な負担

・受審準備のための工数増加

 

3.まとめ 

病院の規模や特色にもよりますが、病院機能評価の審査を通過することによっての経済的なメリットはそれほど大きいとはいえません。しかしながら病院機能の客観的な評価と改善、並びに質の担保という意味では、一通りチェックし改善できるよい機会となります。既に一通り整備されている医療機関はその維持のため。まだ未受審であれば一定のレベルまで引き上げるためにツールとして用いることは意義のあることであると考えます。なるべくデメリットとなる受審準備のための工数増加を抑えるためには、受審が終わった段階をゴールとせず、日常の業務行為として継続することが望ましいです。また自医療機関に求められる機能とレベルも適切に把握する必要があります。現段階の病院機能評価制度は従前と異なり、病院の機能や規模にある程度準じた評価方法に改定されてきており、中小規模の病院にとって少し身近な基準となってきております。メリットとデメリット、目的を明確にした上で一度受審を検討することが望ましいでしょう。